今年も梅雨入りが少し遅れましたが、皆様対策は進んでいますでしょうか。梅雨明けして気持ちよく過ごせるのが待ち遠しいですね。さて、今月の薬局通信は先月紹介した気圧による体調変化の第2回目です。前回の記事で気圧変化により体内の水の巡りが悪くなったり、自律神経のバランスが乱れることで不調が起こると解説しましたが、今回は不調の予防と対策について紹介していきます。
気圧変化に強い身体を作るには?
先月紹介した通り、気圧変化による体調変化は血管の伸縮に伴う自律神経の乱れが原因となることが多いです。そもそも自律神経とは身体の様々な反応をコントロールする末梢神経で、活動時やストレスを受けたときに活発になる交感神経、落ち着いているときに活発になる副交感神経に分類されます。この2つの神経は概ねお互いに相反する性質を持っており、例えば心臓は交感神経によって心拍数を上げ、副交感神経によって下げます。厳密には、心拍数を下げすぎると心臓が止まってしまうため、副交感神経は交感神経と比べて心臓を「弱く」刺激しています。通常私たちの身体は、この自律神経の働きを調節しながら体調を整えているのですが、現代人は夜遅くまで働かなくてはならなかったり、職場や学校などで過度のストレスを受ける機会が多くなっていたりして、本来副交感神経の方が強くなって休息に入る夜になっても交感神経が働いている状態になってしまっている方が増えています。


このような状態が続くと、自律神経の切り替えが上手くできなくなっていき、夜十分に休めない、朝になっても眠気が続くような自律神経の乱れを引き起こすことがあります。つまり、自律神経を正常に近づければ、気象病は予防できる可能性があります。
自律神経を正常化するには、極論「朝起きて太陽の光を浴びる・3食きっちり栄養バランスが整った食事をする・昼間はしっかり活動して適度に身体を動かす・就寝1~2時間前に入浴して身体をじんわり温める・夜間に6~8時間の睡眠時間を確保する」を徹底すれば自律神経は自然と整い、身体も健康になりますが、現代社会でこれら全てをこなすのはかなり難しいです。特に働いている方は昼間の自由な時間が少ないため、なおさら難しくなります。
そこで、今回は手軽にできる自律神経の調節法をいくつか紹介します。
・朝の日差しを浴びる

朝起きたらまず、カーテンを開けて太陽光を浴びましょう。そうすることで副交感神経から交感神経への切り替えがスムーズになります。
・昼間は時々身体を動かす

デスクワークなどでずっと座りっぱなしで動かないでいると、パソコン操作などで脳は活動が活発になっているのに対し、身体はほとんど動いていないため、自律神経が混乱することがあります。時々椅子から立ち上がって少し歩いてみたり、ご自身に合ったストレッチを行うなどして身体にもまだ活動時間だということを思い出させてあげましょう。
・入浴

暑い時期は湯船に浸からず、シャワーだけでお風呂を済ませてしまうことが多くなりますが、シャワーでは身体が温まりません。睡眠時には一度上がった体温を下げる必要があるため、ぬるめのお風呂(熱すぎるのはNG)に浸かって体温をじんわり上げるといいでしょう。
・耳マッサージ

耳の真ん中辺りを摘んで、上下と外側に5秒ほど引っ張る・くるくる回してみる・餃子耳にして手の平で耳を温めるなどのマッサージを行うことで内耳の血流がよくなり、自律神経も整うことが示唆されています。
低気圧で調子が悪くなってしまったら…
しっかり予防をしていても、梅雨のような長雨やこれからの季節は台風で急激に気圧が下がることもあるため、身体のキャパシティを越えてしまうこともあるでしょう。そのようなときの対処法もいくつか紹介します。
・無理せず休む

これが理想の対処法ではありますが、お仕事や学校、外せない用事などがある場合もあると思います。そのような場合は、以下の方法をご参考にしていただければと思います。
・耳マッサージ
予防の項目でも紹介した耳マッサージは、症状が出てしまっているときも有効とされています。
・薬を飲む

あくまで最終手段ですが、どうしてもつらい場合は薬を飲むのも手です。頭痛にはロキソニン(ロキソプロフェン)やイブ(イブプロフェン)などの非ステロイド性解熱鎮痛薬(NSAIDs)などが効果を示す場合がありますが、片頭痛と併発している方には効果が薄いこともあります。片頭痛がある方は、まずは頭痛外来などを受診することをお勧めします。また、頭痛があるからといって解熱鎮痛薬を使いすぎると、耐性がついて効果がなくなったり、薬を飲まないと頭痛が治まらない薬剤依存性頭痛になるリスクがありますので、絶対に飲みすぎないようにしてください。
先月の記事で、低気圧時は拡張した血管から水分が流出し、身体に溜まってしまう状態になると説明しました。漢方医学ではこのような状態を「水滞」と呼びます。また、元々水滞の傾向が強い方は気圧の影響を受けやすいといわれています。水滞を改善するには、身体の水の巡りをよくして余分な水分を排出するのが効果的なので、五苓散や苓桂朮甘湯、当帰芍薬散などがよく効くとされています。ただし、体質によって最適な漢方薬は異なるため、医師や薬剤師のアドバイスを受けることをお勧めします。

