今年の3月は意外と寒く、雪が降ることもありましたが、後半はかなり暖かくなりました。それに伴い、スギ花粉が大量に飛散しており、苦しんでおられる方も多いかと思います。先月の薬局通信では、花粉症について紹介しましたが、今月のテーマは花粉に並ぶ春の厄介者、黄砂についてです。
黄砂とは?


黄砂と聞くと、毎年春から初夏にかけてよく耳にすると思います。その時期は洗濯物についた汚れを払い落としたり、鼻の調子が悪くなったりして大変な思いをする方も多いのではないでしょうか。それで結局黄砂って何なの?というと、黄砂とは中国北部やモンゴル南部に跨がるタクラマカン砂漠やゴビ砂漠、黄土高原などから偏西風に乗って飛来してくる、その名の通り黄色っぽい砂です。砂漠で砂嵐によって巻き上げられた細かい砂が原因とされています。多い時期には空がうっすら黄土色に見えることもあります。日本に飛来するまでに大部分の砂が落ちてしまうので、中国やモンゴル、韓国ではさらにひどく、社会問題にもなっているようです。その年の気候によっても飛散量が変わり、冬場に雪が少なくて乾燥していると多くなる傾向があります。
黄砂による健康被害
黄砂のような細かい粒子が空気中に漂っていると、呼吸の際に吸い込んでしまい、害を及ぼすことがあります。代表的な例は、咳、くしゃみ、鼻水、結膜炎などで、花粉症に類似しているものも多いです。肺の奥の方まで到達した場合や、呼吸器系の基礎疾患があるような方は喘息の悪化などが起こるリスクがあります。ただし、ほとんどは息を吐く際に排出されるため、肺まで到達するのはほんの数%程度だそうです。



黄砂が工業地帯の空を飛んでくる際にそこで浮遊している化学物質を吸着し、それを吸い込むことで健康被害が起こると言われることもありますが、現状明確な証拠はないようです。
黄砂を防ぐには?
花粉と同様、空気中を漂う目に見えないものを完全にシャットアウトするのは難しいですが、マスクや眼鏡をすることで眼・鼻・口腔粘膜への付着を防いだり、外出からの帰宅時には服や髪の毛に付着した黄砂を払い落としたりすることで、影響を抑えられます。花粉症などの方はこうした細やかな対策でも差が出ますので、是非実践してみてください。


また、個人でできることには限りがありますが、黄砂が砂漠から飛んでくるということで、砂漠化を防ぐことも大きな意味では予防と言えます。
黄砂の影響
ここまで黄砂の悪影響を中心に紹介してきましたが、実はいい影響をもたらすこともあります。黄砂は主に中国・モンゴル→朝鮮半島・日本海→日本→太平洋の順番で、砂粒を落としながら飛んできます。この際、海に落ちた砂粒からミネラルが溶け出すことでプランクトンの餌になり、生態系を豊かにする働きもあるとされています。
日本や中国の歴史書などでは過去に黄砂に含まれる赤色の成分が溶け出した赤い雪が降った記録もあるそうです。また、黄砂が多い時期は大気中の粉塵が多くなり太陽光を乱反射することで、太陽が銀色に見えたり、夕焼けが青く見えたりすることがあります。厄介者の黄砂ですが、そのような幻想的な景色であれば見てみたい気もしますね。