
すでに暑くなってきた5月も終わり、6月を迎えました。年々暑くなるのが早くなっているような気がしますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暑さもそうですが、6月は梅雨入りの季節です。雨と湿気で益々気が滅入りそうですが、きれいなものでも見ながら何とか乗り越えていきましょう。そんな訳で、今月の薬局通信のテーマはこの季節にぴったりのアジサイです。
アジサイの花の色



アジサイ(紫陽花)をご存じない方は少ないでしょうが、少し振り返ってみましょう。
アジサイは、日本原産の落葉低木の一種で、梅雨の時期に赤紫~青紫色の美しい花を咲かせます。この花の色は土壌が酸性だと青みが強く、アルカリ性だと赤みが強くなると言われていますが、実際は花びらに含まれるアルミニウムの量に依存しているという研究結果があります。花の中のアルミニウムが多くなると青色が強くなり、少ないと赤色が強くなるそうです。ただ、土壌の性質が全く影響しない訳ではなく、土壌が酸性だとアルミニウムがイオンとして遊離し、根から吸収されやすくなるため青くなりやすくなるそうです。愛好家や農家の方はこの性質を利用して花の色をコントロールしているようです。私たちが美しいアジサイを見られるのも科学的に説明できるのは面白いですね。
アジサイの毒と薬
アジサイには毒があるとされています。成分の特定には至っていないようですが、これまでいくつかの中毒が報告されています。症状としては、過呼吸・けいれん・麻痺・心拍数増加・下痢・嘔吐・めまい等が起こるそうです。日本ではアジサイを積極的に食べることはほとんどありませんが、料理の飾りとして使われることはあるため、見かけても食べないようにしましょう。
毒があるということで、アジサイに少し危ないイメージがついてしまったかもしれませんが、実はアジサイの花はショウカという生薬としても知られています。漢方薬の成分として使われることはありませんが、古くから解熱剤として使われてきました。ただし、葉や茎、根は毒性が強いとされているため、ほとんど使われることはありません。

また、アジサイの仲間であるジョウザンアジサイ(常山紫陽花)の根は中国で抗マラリア薬として使われることがあります。フェブリジンという成分が主に効果を発揮するようですが、嘔吐の副作用が強いようです。現在、このフェブリジンを元に嘔吐の副作用を抑えた抗マラリア薬の開発が進められています。日本のアジサイにもフェブリジンは含まれている可能性が示唆されています。中国でも八仙花(はちせんか)という抗マラリア薬として知られているようですが、やはり嘔吐が出やすいためあまり使われることはないそうです。