前回お話しした通り、脂質異常症の主な原因は食事の摂りすぎです。
しかし、食事が原因ですと言われても納得できない方が多数いらっしゃると思います。
患者さんと話していると、食事に大きな問題がないと思う方がいます。一定数の痩せ形の患者さんもいらっしゃるので特にそう思います。脂質をほとんど摂ってないとすれば、コレステロールを作る原料もないことになり、そうそう数値が上がることはないはずなので、食事の内容が食物繊維・たんぱく質が少なく、脂質に寄っているのだとは思います。しかし、中には和食中心なのに上がっている方もいます。そもそも一般的に食べ過ぎていれば通常は太るはずです。少なくとも食べ過ぎではないと推察されます。
では、なぜ食事に大きな問題がないにも関わらずコレステロールの数値が悪化していくのでしょうか?
それは、食事はあくまでも主の原因であり、脂質異常症は複合的な原因で起きているからです。
脂質異常症は代表的な生活習慣病ですが、生活習慣病とはよく言ったもので、食事だけでなく、運動、睡眠など全般的な生活習慣が原因になっているということを的確に表しています。運動不足・睡眠不足・体の冷え・姿勢の悪化等、体の機能が落ちてしまう要因はいくつもあります。また、飲酒や煙草なども容易に想像がつく原因かと思います。つまり、食事によるマイナス要因が少なかったとしても、体の機能(今回で言うと肝臓の機能)が落ちてこれば、コレステロールを調節することができなくなり、何か少しの要因で脂質異常症として数値に現れてきます。
これは、もちろん脂質異常症だけでなく高血圧や糖尿病、高尿酸血症なども同じことです。生活習慣病は主な原因である食事を正すと即効性があり、効果が出やすいですが、食事だけでは完治することはめずらしいとも考えています。
今までの話とは逆に、運動をしっかりしていて、睡眠もたっぷりで疲れもなく、体温が高く、血流もよく、筋肉も柔軟で姿勢が良い人だとすると、肝臓は元気一杯でかなり丈夫なはずです。そうなると、食事に脂質が多いくらいでは肝臓は何ともないので、コレステロールのバランスが崩れることはなく数値は上がらないはずです。過剰に摂取しても肝臓が問題なく処理できていれば数値には現れないということです。
アルコールの分解能力が高い人は、相当な量のお酒を飲んでも肝臓の数値が悪化しないことと同じです。逆にアルコールの分解能力が低い人は、少しのお酒でも健康を害し、大病につながります。
もし、食事に原因がないと思ったら、他に何か原因があるはずで、コレステロールが上がったという体のサインを見逃してはいけません。日々の生活を1つずつ振り返り、原因を探していきましょう。