事務員HさんとSさんの白湯の話を聞いて、私も思うところがありましたので、一度飲み水について真剣に考えてみようと思いました。今回のお話は、特に根拠があるわけでもなく、考えを整理しただけに近い内容です。ほんまでっか?の気持ちで読んでいただけると幸いです。
ネットや情報誌を見ていると、今の日本では冷えた飲み物を口にする機会が多く、飲み物により冷えが助長されているという内容の記事があります。確かに真夏に外出していても自販機やコンビニがどこにでもあり、自宅には冷蔵庫が必ずあります。年中どこにいても冷たい水を飲むことができます。冷蔵庫ができる以前は、真夏に冷えた水を飲もうとするなら、川や井戸で汲みたての水くらいしかなかったのと比べれば、記事が言わんとすることは理解できます。そして、実際に冷えの原因になっている人もいると思いますので、間違いでもないと思います。
普通に考えれば人間の体積からすると、キンキンに冷えたコップ1杯の水を飲んだとしても体温への影響は小さいので、簡単に体は冷えないはずです。しかし、日本人の平均体温はどんどん下がっていて、人間本来の適正体温(平熱)36.6℃~37.2℃からすると、そもそも冷えている人が多い現状では、コップ1杯の水ですら温める熱がなく、体の負担になるということは十分に考えられます。さらに、冷たい水だけでなく、冷たい食べ物や冷房もあり、体が冷えてしまっている日本人、特に女性や高齢者は多いと思っています。成人男性と比べ、筋肉量が少なく熱を生産する能力が低いからです。
体が冷えているのであれば白湯を飲んで体を温める、血行をよくすることは理に適っているように思います。逆に言えば、白湯を飲んで調子がよくなるということは、慢性的に体(特に内臓)が冷えていたからだと考えられます。
現代人は体が冷えている人が多いので、白湯(温かい水)を飲むようにしましょう!冷えた飲み物は控えましょう!で話は解決のように思いますが、ここで1つ疑問が浮かびます。
人は基本的に冷たい水を好みます。私もそうです。みなさんもそうだと思います。明らかに冷たい水の方がおいしいです。冬でも冷たい水を好んで飲む人が多いと思います。冷たい水に比べ、ぬるい水や白湯はおいしくない、飲みにくいと思う人が圧倒的に多いはずです。真冬の飲食店で、温かいお茶が出ることはあっても、お湯や白湯は出てきませんが、冷たい水は出てきます。お湯や白湯を好む人が少ないからだと思います。
これの何が疑問かと言いますと、水は生命が誕生してから現在に至るまで、生命にとって不可欠で代替不可能な物質であり続けました。何十億年も必須だったわけですから、おいしいと思う飲み方が体にも良くないと辻褄が合いません。本能的に多くの人がおいしいと思う方が体に悪く、おいしくないと思う方が体に良いとすると、冷たい水を好む人たちは、体に悪い生活習慣だということになります。お湯や白湯を好む人たちは、体に良い生活習慣だということになります。わずかな差だと思いますが、体に悪い生活習慣であれば、病気になる確率が高く、病気によって死亡する確率も高くなるはずです。それが何世代、何十世代と続けば、段々と自然淘汰が起き、冷たい水を好む人が減っていき、お湯や白湯を好む人が増えていくはずです。しかし、現代においても冷たい水を好む人が減っていないわけですから、冷たい水を飲んでいる方が健康を維持し、死亡率を下げ、子孫を残す可能性が高かった要因があると考えられます。
その要因は何なのか?ああでもない、こうでもないと考えているうちに、これなら一理あるのではないかと思う要因が2つありました。
1つ目の要因は、冷たい水は雑菌・カビが繁殖している可能性が低いということが考えられます。昔は塩素消毒もなく、冷蔵庫もありませんので、水を常温で放置すると空気中の雑菌やカビが入り込んで腐りやすかったはずです。実際、水は簡単に腐るので、水道水は防腐するために体に有害な塩素を残してまで、水質を維持しています。もし、水道水に残留塩素がなければ、菌に汚染され飲めない水が出てくる可能性が高くなります。日本以外で水道水から飲める水が出てくる国は少ないと言われていますので、水はしっかり管理しないと菌に汚染されることはイメージしやすいと思います。飲み水から感染症に罹ってしまうリスクは、抗生剤もない時代では命取りになることも多かったはずです。
2つ目の要因は、昔は家事や狩り・農作業等、現代人にとっては重労働が当たり前でしたので、運動不足もなく、平均体温も高かったことが分かっています。慢性的に体が冷えている人は非常に少なかったはずです。ですから、冷たい水を飲むことで冷える心配はなく、むしろ重労働により熱くなりすぎた体をクールダウンさせるために有効だった可能性があります。過剰な熱を冷ますことで、汗の量も減りますし、余計な体力の消耗を少なく出来ます。人間の歴史は飢餓との戦いと言っていいくらい、食糧の確保に苦労してきました。飢えを前提とすると、少しでも余計なエネルギーを使わないようにすることは、生存率を上げる効果が高かったはずです。
その一方で白湯も昔から体に良い効果があると信じられていて、病人に薬を飲ませるときは白湯にしていたようです。ここから推測するに、おそらく昔の人たちは、病人に白湯を飲ませると生存確率が上がることを経験則で学んでいたと思われます。
科学が進んだ現在の知識で考えても、体を少しでも温めることにより免疫力が上がる、内臓の働きが良くなる等の効果と、弱った体に雑菌が入らないように、水に入ってしまった雑菌やカビを煮沸して殺す効果があると説明することができます。迷信ではなかったと考えるのが自然です。
病人ではなかった場合でも、殺菌効果を考えると毎回白湯の方が、殺菌した水なので、冷たい水よりも感染症になる可能性が低くなることになります。生存率を上げるとするなら白湯はもっと広まってもよかったはずですが、常用水として広まりませんでした。なぜ広まらなかったかと考えると、昔はエネルギー源が非常に少なく、簡単に水を煮沸できるような環境になかったからだと思います。確率的に少ない感染症の予防のためだけに、薪代を使ってまで毎回白湯を作ると言うのは、お金持ち以外は割に合わなかったのでしょう。薪の費用を節約して、そのお金で食べ物を買って栄養を摂った方が生存率を上げる効果が高かったと考えます。
最後に結論です。今までの考えを総合すると、昔は理に適っていた冷たい水を本能的に好むかもしれませんが、運動量が少なく、体温が高くない現代人には、冷たい水を飲むメリットは特になく、むしろデメリットの方が大きくなっていると思います。特に女性や高齢者には影響が大きいと思います。かと言って、飲み水による感染症のリスクもほとんどないので、わざわざ一度煮沸させるメリットも多くないように思います。そうなると白湯のメリットは温めること、特に内側から内臓を温める効果が大きいことだと思います。結局のところ白湯が大事なのではなく、芯まで温まる冷え対策をしっかりしましょう!ということになると思います。
平熱が36.6℃未満の人は、白湯(お湯でも可)か冷たくない水を飲むことで健康維持にメリットがあり、平熱が36.6℃以上の人は、白湯の効果はあまりなく、冷たい水のデメリットもほぼないので好みの温度の水を飲んで問題ないと考えます。
※補足説明
お茶、コーヒー、紅茶等は、温かい方を好む人が多いと思います。私もコーヒーが好きですが、夏でもホットコーヒーを飲みます。これは温かい飲み物が体に良いので本能的に好むということではなく、単に葉や豆から旨味を煮出して飲む嗜好品ですので、温かい方がおいしいと感じるのだと思います。水とは分けて考えています。