今年の夏も暑いですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。こんな季節には先月の記事で触れたように、海水浴へ行かれる方も多いかと思います。しかし、夏の楽しみといえば海水浴以外にも、森や山での森林浴やキャンプ、虫捕りなども外せないのではないでしょうか。今回の記事では、海の次は森ということで、森林浴の歴史と癒し効果についてお伝えしていこうと思います。
森林浴の歴史
「森林浴」という言葉には皆様それなりに馴染みがあるかと思いますが、実は日本人が考案した言葉であることはご存じでしょうか?時は1982年、当時の林野庁長官である秋山智英氏が「温泉浴」、「海水浴」、「日光浴」になぞらえて命名したとされています。温泉などに「浸る」ことが大好きな日本人らしいネーミングではないでしょうか。その後森林浴は世界中に広がっていき、Forest Bathing、Forest Therapy、Shinrin-yokuなどの名前で親しまれています。
森林浴の癒し効果
人々は癒しを求めて森林浴を行いますが、そもそも何故人は森で癒されるのでしょうか?近年では様々な研究がされており、多くの説が提唱されていますが、今回はその中のひとつである「フィトンチッド」を紹介したいと思います。フィトンチッドは樹木から放出される物質で、いわゆる「木の香り」や「森の香り」と言われる香りの主成分です。本来フィトンチッドは木々が外敵(菌、昆虫など)を寄せ付けないために放出している自己防衛のための物質であり、抗菌、防虫効果があるとされています。また、フィトンチッドは消臭作用もあり、森の中にある動植物の死骸や排泄物の臭いを消してくれているため、森の中ではそのような不快な臭いを感じないのです。私たちは昔から木々を加工することでフィトンチッドの恩恵を受けていました。例えばヒノキはフィトンチッドを多く放出するため、シロアリなどの害虫に強いとされています。また、消臭剤などでも「森の香り」がするものはフィトンチッドが含まれている場合があります。そして人間はフィトンチッドの香りを嗅ぐとリラックスできるとされており、医学的にも脳波を整える、自律神経を安定させる、ストレスを軽減するなどの研究結果が報告されています。
ここからは筆者の私見なのですが、森林浴の癒し効果はもっと奥深いところにもあると思っています。皆様も生命の源が海であることはご存知かと思いますが、生物の進化には森が必要不可欠でした。植物は最も早く陸上に適応した生物であり、それが繁栄することで森を形成し、豊富な酸素、木々や草むらのような隠れ家を提供し、また食糧になることでも多くの生物の繁栄と進化の礎となりました。初期の哺乳類も恐竜などの天敵から身を守るため、森で暮らしていました。皆様も実家やふるさとに帰ると何とも言えない安心感を得られることがあるかと思いますが、私たちは遺伝子の奥底に刻まれたその感覚によって今でも森を故郷だと認識しているため、安心と癒しを得られるのではないかと思っています。