10月に入り、ようやく暑さも落ち着いてきたかと思いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。気温の変動が激しい季節は体調を崩しやすいのでどうかご自愛ください。さて、今回の記事は8月に投稿した森林浴の記事でも少し触れた酸素と私たちの健康についてお伝えしていきます。
酸素の働き
酸素は多くの生物が呼吸をするために必要な物質であることは皆様ご存じかと思いますが、体内でどのような働きをしているのでしょうか?酸素が関係する生体内の反応は数多くありますが、その中でも最も重要なのはグルコース(ブドウ糖)の分解によるエネルギー産生=呼吸です。呼吸というと、酸素を吸って二酸化炭素を吐くというイメージが強いかと思いますが、本来呼吸は「グルコースを分解してエネルギー(ATP)を取り出し、二酸化炭素を排出する反応」と定義されます。その中で、グルコースを分解するのに酸素を用いる場合は「好気呼吸」、酸素以外の物質を用いる場合は「嫌気呼吸」と呼ばれます。好気呼吸は嫌気呼吸の14~19倍(諸説あります)のエネルギーを作ることができ、私たちヒトを含む多くの生物は好気呼吸によってエネルギーを得ています。肺から吸収された酸素は血中の赤血球によって全身に運ばれます。運動などで身体を動かす際、息が上がる(呼吸が激しくなる)のはより多くのエネルギーを作るために酸素を必要としているからなのです。また、心拍数を上げることで血流をよくして酸素を素早く全身に送っています。
以下に一般的な好気呼吸の化学式を記載します。
C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O + 28~38ATP
酸素の毒性
ここまで生体内における酸素の利用についてお伝えしていきましたが、実は酸素が本来生物にとって猛毒も同然の物質であることをご存じでしょうか?この理由は酸素の反応性の高さにあります。「反応性」というとあまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、簡単に言うと「化学反応の起こしやすさ」です。酸素は簡単に他の物質と結合し、酸化反応を起こします。このときに酸素はいわゆる「活性酸素」に変化します。この活性酸素は生物のDNAやタンパク質と結合し、破壊したり変性させたりして害を及ぼすことで知られていますがその一方、好気呼吸の化学反応において活性酸素は必要不可欠な物質でもあります。
出展:ALA-LABO
現代では酸素カプセルなどに入って行う酸素療法などもありますが、多量の酸素を摂取し続けると「酸素中毒」を引き起こすことがあります。酸素中毒は酸素の摂取量が増えることで相対的に体内の活性酸素も増えてしまい、呼吸器系を中心に様々な不調が現れ、最悪の場合死に至ることもあります。
活性酸素から身を守るには?
出展:Wellness Memo (https://www.greenhouse.co.jp/wellness_style/memo/2013/201305/index.html)
他にも酸素は様々な悪影響を及ぼすことが知られていますが、生物には活性酸素に対抗する術がいくつかあります。多くの生物は細胞内にスーパーオキシドディスムターゼやペルオキシダーゼという酵素を持っており、これらの酵素の働きによって活性酸素を無力化しています。また、栄養素にも活性酸素を無力化できるものがあり、代表的なものはビタミンC(アスコルビン酸)のような抗酸化物質です。ビタミンCは強い還元作用を持っており、活性酸素を元の酸素に戻すことができるため、この性質を利用しているのです。医療の現場でも、お肌のシミには活性酸素が関わっていると言われているため、ビタミンCを含んだ医薬品(シナールなど)を内服して治療を行うことがあります。
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おわりに
今回は私たちが普段何気なく吸っている酸素にも様々な一面があることをお伝えしてきました。日常生活で酸素のことを意識するのは難しいですが、これからの時期室内で鍋や七輪などを使う機会があれば酸欠・一酸化炭素中毒には十分気を付けていただければと思います。