5月になりました。皆様はゴールデンウィークにお出かけなどのご予定はありますか?今年は最大10連休にして遠出される方も多いかと思います。そんな5月の薬局通信のテーマは古来より続く日本のイベント、端午の節句です。
端午の節句(こどもの日)については、兜飾り、鯉のぼり、菖蒲湯、柏餅、ちまきなどいろいろなイメージで馴染み深いと思います。端午の節句は多くの日本文化と同様に中国に起源をもつとされ、年5回ある節句(1/7:七草の節句、3/3:雛祭り・桃の節句、5/5:端午の節句、7/7:七夕・笹の節句、9/9:菊の節句)のひとつです。古くは男の子の健やかな成長を祈願するために武家を中心に行われていましたが、江戸時代から庶民にも広まっていったそうです。1948年からは「こどもの日」として国民の祝日として定められ、時代の移り変わりとともに男女問わず、子供たちの健康を祝う日に変わっていきました。今でも兜飾りや甲冑を身に纏った五月人形が飾られるのは、武家の祝い事であった時代の名残とされています。
鯉のぼりは黄河の上流にある「龍門」という滝を登り切った鯉が龍になるという中国の故事、「登龍門」にちなみ、滝の激流に負けない鯉の力強さや龍になることを立身出世に見立てたことが由来とされています。
端午の節句にはお風呂に菖蒲を浮かべた「菖蒲湯」に浸かることで健康増進や邪気祓いを行いますが、実は菖蒲自体もれっきとした漢方生薬として使われています。内服としては沈静・健胃、浴用としては血液循環促進・冷え性・肩こり・疲労痛に効果があるとされています。菖蒲湯に浸かることで身体を温め、元気にすることで子供たちの健やかな成長を助ける意味合いがあったのかもしれません。内服でも効果があるとされる菖蒲ですが、日本産のものは有害な物質を作る個体が遺伝的に多いため、内服には向かないとされています。また、菖蒲の葉の形が剣に似ていること、「しょうぶ」という読みが「尚武(武道・軍事などを大切なものと考えること)」、「勝負」と結び付けられ、武家に好まれていました。
また、基本的に柏餅やちまきを包んでいる葉は剥いてしまい、食べることはありませんが、これらの葉に薬としての効果はないとされています。こちらは柏の葉が冬に落葉せず、春に新芽が出てから落葉することから子孫繁栄の祈願、ちまきは厄除けのために食べられているそうです。
以上より、昔から武家に好まれてきた端午の節句ですが、これは武家が特に男児=跡取りの誕生を重要視していたためだとされています。医療の発達していない時代では子供が大人になるまで成長できる確率が今より低かったため、様々な困難を乗り越えられるようにという、親からの願いの結果なのでしょう。